【サローネ対談 第11回】 藤元健太郎 × 奥谷 孝司氏(株式会社良品計画 WEB事業部長)
お客様と時間を共有する、無印良品に学ぶこれからのソーシャルマーケティング(1/4)
編集部:今回でサローネ対談は第11回を迎えました。
今回は、いつものようにITによる社会システム革新に詳しいディーフォーディーアールの藤元健太郎さん(以下敬称略:藤元)と、
ゲストとして株式会社良品計画のWEB事業部長 奥谷孝司さん(以下敬称略:奥谷)にお越しいただいております。
お二人には、「お二人には、「無印良品に学ぶ、ソーシャルマーケティングのあり方」というテーマで、お話をお伺いしたいと思います。」というテーマで、お話をお伺いしたいと思います。
● お客様の日常に入り込み、時間を共有する
奥谷:まずは良品計画におけるWEB事業部の役割についてお話したいと思います。
弊社のWEB事業部には3つの役割があります。
ひとつはお客様に実際に店舗に行っていただくための「店舗送客機能」を充実させることです。
弊社のECサイトでは店舗や在庫に関する情報を詳しく公開しています。
こういった取り組みは、ECサイトを始めたときからなるべく早く行ってきました。
もうひとつは「くらしの良品研究所(http://www.muji.net/lab/)」を中心とした、お客様とのコミュニケーションによるブランディングとお客様との絆づくりです。
最近ではソーシャルメディアもこれに絡んできています。くらしの良品研究所では、無印良品が考えるライフスタイルを提案してきました。
そして、3つ目の役割が、ECの売上を上げることです。
この中でも特に力を入れているのが、「店舗送客」と「お客様とのコミュニケーション」です。
私たちは、店舗送客を最近とても重視していて、それが最終的には「顧客関係マネジメント」や
CRM(情報システムを応用して企業が顧客と長期的な関係を築く手法のこと)につながると
思っています。その上で、WEB事業部ではお客様へのアクセス方法に着目しています。
これまで、商品が誰に売れたのかということを一生懸命見てきましたが、それでもいわゆる「カテゴリキラー(特定分野の商品群において圧倒的な品揃えを行い、
低価格大量販売をする小売業のこと)」に勝つのはとても難しいことです。そこで、圧倒的な商品力をもってシェアを奪うのではなく、
「顧客時間」、つまりは「お客さんの日常の時間」というものに入り込めないかと考えています。
私たちの場合、顧客範囲はあまりにも広いので、これをさらに広げるということは難しいです。
そこで、顧客時間を確保することができないかという点に着目しました。今の小売業の中において一番強いのはカテゴリキラーです。
どうしても小売業の視点は売上を追ってしまいますし、売上をとればもちろん会社としては勝ちです。
しかし、従来のような売りっぱなしの時代は終焉に向かっているように思えます。
ただ単に商品を売るだけならカテゴリキラーは強いです。しかし、我々の商品には「衣・生・食」が含まれており、
これによって、色んな人の生活に少しずつですが、無印良品の存在が入り込んでいます。
そこで、「何か迷っていらっしゃいますか?」「買った後はどうですか?」といったようにトントンと肩をたたくような接し方で、
お客さんの時間の中に入れないかなと考えました。
実は弊社はネットストアにしか顧客データが存在していません。実店舗ではオペレーションを効率化するために、
人件費にコストをかけて「○○さん、いつもありがとうございます」と個別に対応するような接客はあまりしていません。
しかし、ネットでは誰が何を買ったかという情報がしっかりと分かります。ネットもお客さんにとっての時間のひとつなので、
まずはそこをしっかり見ようというところに至りました。
ネットストアは過去十年間にかけて、売上は右肩上がりで伸びてきました。ただ、2006年くらいから成長率が落ちてきました。
これまでの売上の伸び方というのは、広告にお金をかけ、そして「無印良品週間」という10%OFFキャンペーンをはじめとする
イベントでどんどん会員を増やしてきたことで成り立っていました。近年のウェブ市場の広がりも要因のひとつです。
しかし、これではやがて行き詰ることは明らかでした。そこで、サイトのリプレイスやハード面の強化に着手し、
登場し始めたソーシャルに力を入れた頃から売上が再び伸びてきました。
ソーシャルメディアを初めて見たときに、私は「これはプライベートな空間だ」と思いました。
その空間にお客様も企業も入ることができるということが分かったので、これを使ってお金をかけずに顧客との接点を増やそうと思って取り組んできました。
弊社には「6:4の法則」という指標があります。ネットストアの会員数は290万人ですが、
過去二年間のうち一回でもネットストアで買い物をしたことがある人は4割しかいないのです。
つまり、6割の人は過去二年間に渡って買い物をしていない。さらに、アクティブユーザーは15~16%程度です。
つまり、ほとんどの人が無印良品の商品をネットストアでは買っていないということです。
その理由として、配送料がかかることや、全国に無印良品は約360店舗もあるので、
ネットでわざわざ買わなくても実際にお店に行く方が早いということが挙げられます。
それにも関わらず、今までのネットストアはCRMに力を入れず、受身の姿勢でした。
これからはそれではうまくいかないので、方針転換をしています。在庫照会機能だけでなく、
ソーシャルメディアからどんどん情報を発信して来店を促したり、twitterやFacebookを使ってコメントや意見を投稿してくれたお客さんには店頭で使えるクーポンを発行したり、
といった様々な店舗送客施策を行っています。
さらに、店舗受け取りサービスを実施しています。生活雑貨や衣類・小物などをネットストアで普段買い物をするようにカートに入れてもらい、
実際に行く店舗を決めると、店頭で受け取ることができます。配送料はかかりません。
弊社のネットストアは、どうしても小売業のECなので、実店舗との売上の取り合いになってしまいます。
そこで、私は店舗に売上が付くようにしようと考えました。今までも、ネットで買ったものを店舗で返品したり、
返金したりすることができました。やはり実際に店舗に行ってもらい、店舗の売上になった方が、店舗とネットストアの間にウィンウィンの関係が構築されます。
お客さんにネットストアで「何を買おうかな」と考えてもらう時間と、実際に店舗に行ってもらう時間の両方をかけてもらうことができます。
ハード的な投資と、フリーのプラットフォームを使って実施することを充実させながら、お客さんにはどんどん店舗に行ってもらおうと考えています。
● 電子クーポンの登場
奥谷:電子クーポンにも挑戦しており、現在は23店舗で導入しています。
会員一人一人にバーコードをつけています。店舗でケータイを使って発券機にそのバーコードをかざすと、
それを読み取って、クーポンが印刷されたレシートが発行されます。
実際に店舗に行くことで、「5,000円以上買うとレジにて500円引きになる、5%OFFになる」
といったメリットを享受することができます。
こうして、OtoO(オンライン・トゥ・オフライン)のマーケティングを行い、
どのくらいお客さんが実際に店舗に行ってくれるかを確かめています。
「6:4の法則」の6にあたるお客さんは、ネットストアではなく実際に店舗で購入するので、
このクーポンを使って買ってくれるだろうということが分かります。
クーポンを使った様々な実験もしています。お客さんが500円というメリットを消費者行動として
どう捉えているか知るために、「5,000円以上買ったら500円OFF」というキャンペーンと
「5,000円以上買ったら500円のギフトカードをプレゼントします」というキャンペーンを実施したことがあります。
500円を値引きすると、他のお店でその500円分の買い物をしてしまうかも知れません。
ところが、ギフトカードだと無印良品での買い物にコミットすることになるのです。
しかも、利益として返ってくるから我々にお客様がギフトしてくれているようなものです。
それでもお客さんはギフトカードを渡すと非常に喜んでくださいます。
ギフトカードをもらったお客さんは、来店する際に購買意欲が高くなるというのもポイントです。
今の時代のマーケティングは「他に有効な施策はあるのだろうか」というくらい、値引きに頼っていますが、
500円のギフトカードの事例は新たなマーケティング施策のヒントになりそうです。
最近の取り組みとして、今年の6月に有楽町店で実施した「FUKU-BIKI(福引)キャンペーン」があります。
店舗でバーコードをかざすと、福引が一回できます。また、引き換えた参加券は、
3,000円以上のお買い物の際に10&OFFになるクーポンとして使うことができる、というものです。
なんと一店舗だけで1700万円の売上が出ました。クーポンの使用率は77.3%にも上りました。
また、キャンペーンに参加してくれたお客さんの客単価はとても高いということも分かりました。
7月にはキャンペーンを拡大し、約120万人にメールを送り、10日間ほど実施しましたが、
予想よりもお客さんが来ませんでした。しかし、客単価の平均が約9,000円にも上り、
結果的に非常に大きな売上になりました。電子クーポンを利用したお客さんの売上だけで、
店舗の売上の4%を占めることになりました。
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